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曲か、詩か

オペラの世界では台本作家と作曲家のエピソードには枚挙にいとまがありません。
台本が無ければオペラは成り立ちませんし、作曲家は台本に対して真摯に向かい合います。

でも、所詮、芸術家。
エゴが頭をもたげて、争いが始まります。

台本作家と作曲家は友好関係を続ける事は難しいのが現実です。
もちろん、上手くいっている関係もあります。
モーツアルトとダ・ポンテやリヒャルト・シュトラウスとホフマンシュタール。
など、多くの名作を世に送り出したカップルもあります。

本題ですが、合唱曲の世界ではどうなのか?

結論は同じだと思っていました。

しかし、最近、考えが変わって来ています。
きっかけは信長貴富の曲をアンサンブルエテルナで取り上げてからです。

今年の11月の演奏会で信長さんの曲集「雲は雲のままに流れ」を演奏しますが、
信長さんの詩に対するアプローチが素晴らしくて、部分的にはテキストを超えた
表現をしています。

「はじめに言葉ありき」

と言いますが、テキストの持っているベクトルを伸ばすだけで無く、
テキストの中に隠されている本当の意味を浮き彫りにする感じです。

長い間、曲はテキストを超えられないと言われてきましたが、
そうでもないかも、と思い始めました。

例えば、この曲集の最後は木島始作詞の「それじゃ」ですが、
木島さんの詩は「また会おう」をリフレインにして、とてもかわいい感じです。
テキストは4番までありますが、曲はどんどん変化をしていって、
若干、信長さんの詩の挿入もありますが、元気に曲は終わります。

信長さんのような作曲家は少ないですが、おそらく現在の合唱の分野では、
最も素晴らしい作曲家だと思います。

楽譜を見ていて、飽きる事がありません。
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プロフィール

Yoshihiro Chiba

Author:Yoshihiro Chiba
千葉芳裕(指揮者)
 国立音楽大学卒業。指揮を若杉弘、三沢洋史に師事。ピアノを児玉邦夫氏に師事。1997年12月東京室内歌劇場第90回公演ヒンデミット作曲「長いクリスマスディナー」(グローブ座)でオペラデビュー。現在は二期会、日生劇場、東京室内歌劇場、新国立劇場を中心に活動している。 
 1999年小沢征爾指揮「ファウストの拷罰」の合唱指揮、2000年8月には〈日生劇場サマーフェスティバル2000〉において、「くさびら」「羽衣」(谷川俊太郎脚本、小森昭宏作曲)を指揮。2001年より毎年、芸大オペラ定期の合唱指揮を務めている。2002年5月の東京室内歌劇場第100回記念公演「ファルスタッフまたは3つのいたずら」では、怪我で降板した若杉弘氏の代役を急遽務め、公演を成功に導いた。2003年、秋田建都400年記念オペラ「押し花の愛」(NHKBSで放送)、「ヴェルディ協会マラソンコンサート」(東京文化会館)、「椿姫」(京都春秋座)。2005年、韓国でコリアンチェンバーオペラグループ公演、レハール「微笑みの国」ブリテン「真夏の夜の夢」を韓国国立劇場で指揮。この公演は韓国KBSテレビでドキュメンタリー番組が制作・放映された。2008年にはブラジル移民百年祭で招待演奏をした。さらに2008年からは昭島「いさなの会」の音楽監督を務めている。最近では「ルスコアール」などのアマチュアオーケストラも積極的に指揮をしている。オペラのみならずルネッサンス及びバロック期の合唱曲もレパートリーとしている。また、ジャズ、ポップス、ロックなどのレコーディングも数多く手がけている。現在、東京芸術大学演奏芸術センター講師、足利オペラリリカ指揮者、アンサンブルエテルナ指揮者。

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